2009年10月2日金曜日

不思議 私たちのからだ ~「免疫学」

医療検査学科 畑中
神戸常盤大学キャンパスライフ応援サイト まるまるたまご 教職員ブログより

 新型インフルエンザが話題になっています。前期は1週間休校になりました。後期、流行しないことを望むばかりです。

 ところで、ヒトには外部から侵入する病原体(異物)を攻撃して、私たちを守る「免疫」というシステムがあります。前述の新型インフルエンザウイルスに対しても威力を発揮します。免疫システムは病原体を攻撃しますが、不思議なことに、自分自身は決して攻撃しません。正常に作動する場合、免疫システムは「自己」と「非自己」を厳密に認識し、「非自己」のみを攻撃するのです。この攻撃は病原体だけでなく、移植などの時にも起こります。免疫系は遺伝子の型が合わない移植片を異物として認識し、攻撃します。その結果拒絶反応が起こります。私たちは意識することはありませんが、体内では日々、免疫系と異物との間で熾烈な戦いが繰り広げられているのです。

 ところが妊娠では不思議なことがおこります。胎児は母親と父親の遺伝子を半分ずつ持っています。つまり胎児は母親にとって半分は異物になるのですが、なぜか母親の免疫システムは胎児を攻撃しません。さらに、代理母では胎児は100%異物であるのに、なぜか胎児は攻撃されません。妊娠では免疫系を制御するシステムが作動し、胎児が免疫の攻撃から守られるらしいのですが、その詳細は解明されたわけではありません。

 何百万年もの人類の歴史の中で、当たり前に行われてきた妊娠・出産ですが、実は未だに神秘のベールに包まれているのです。私たちの体にはまだ解明されていないことが、いっぱいあります。科学者の眼で、自分の体の不思議を見てみませんか?